平口洋の思い/ビジョン 文字サイズ
平口洋

「消費税を上げる前に(2)」

 民主党政権発足後の2009年秋、「事業仕分け」が注目を集めたのは、まだ皆さんの記憶に新しいと思います。税金のムダ遣いをえぐり出す、との触れ込みでしたが、ばらまきとも思える民主党のマニフェストを実現するための財源は、とても確保できませんでした。自省を込めて訴えますが、国の仕事のムダは、外からは決して見えない日常業務の中に潜んでいるのです。
 例えば、長い間続いているというだけの理由で効果ははっきりしないまま行われているさまざまな統計調査。既に役割を終え、国民のだれもが恩恵を受けなくなっているのに予算だけは付いている制度。……こうした業務をのんびりとこなし、あるいは仕事らしい仕事はしていない公務員の人件費など、本当にムダな費用は、経常経費の中に隠れています。政権運営の経験のない民主党がそれを見つけるのは、とても無理だったようです。「事業仕分け」は、手法が拙劣だったため、目立つ事業費ばかりに注目し、本当のムダはえぐり出すことができませんでした。予算を削られると、あたかも自分に無能の烙印が押されたように錯覚する公務員の悲しいサガもあるでしょう。
 こんな「必要経費」にメスを入れる前に消費税をアップすることは許されません。既存の制度や法律の廃止を検討する委員会の設置など、対応策はさまざまに考えられます。問題は政治の「やる気」です。

(12年8月4日)

平口洋